「UNICEF」とは正式名称の略称で、日本ではユニセフとも呼ばれています。
しかしこの呼び方に首をかしげる人がおり、「ちょっと待った」と声をかける事も多いです。
それというのも現在のユニセフの正式な名称は「国際連合児童基金」で、これを英語にすると「UnitedNationsChildren’sFund」となります。
頭文字を並べても「UNCF」にしかならず、「I」の部分がないのが一目瞭然です。
なのにユニセフと呼ばれている理由はひとえに元々の団体名を使っているからに尽きます。
ユニセフ誕生の経緯
そもそもユニセフが誕生したのは第二次世界大戦がきっかけです。
戦争を題材にした作品をはじめ、歴史の授業でもわかるように第二次世界大戦は陰惨でした。
第一次世界大戦でも大勢の兵士たちがその命を無残に落としたものの、2つの戦争の違いを挙げるなら民間人の被害の規模です。
第一次世界大戦でも民間人が兵器の生産ラインを支えたりしていましたが、第二次世界大戦ではより一層深く関わる事になり、攻撃の対象になりました。
イギリスやアメリカ合衆国、ドイツに日本が行った無差別爆撃によって市街地の被害は凄まじくなり、被害が少ない土地への移動を余儀なくされた人々は珍しくなかったです。
また第二次世界大戦ではナチスが行ったホロコーストが世界に衝撃をもたらし、1945年のニュルンベルク裁判ではナチスの高官たちが「人道に対する罪」という新しい罪もといジェノサイド罪で裁かれるようになります。
いずれにしても国際的な戦争がいかに空前絶後の被害をもたらすのか、それをようやく人類は認識したわけですがその被害に対するセーフティ装置をつくるように人道への意識が戦後高まっていきました。
ニュルンベルク裁判で持ち出されたジェノサイド罪
例えば先述したニュルンベルク裁判で持ち出されたジェノサイド罪、それまでの歴史を踏まえるとこれは異例です。
元々ジェノサイドは誇らしい行為と見なされていたところがあります。
それは植民地の一環で起こる事態で、繁栄をもたらすためには気にされていませんでした。
ところが人道に対する考えが深まるとジェノサイドはこっそりと行われるようになり、見つけにくくなっていきます。
例を挙げるならアルメニア人虐殺とウクライナ大虐殺です。
どちらも国家がその情報や資料を隠していたため、近年になるまで明らかにされる事はありませんでした。
余談ですがアルメニア人虐殺はあのヒトラーが演説に用いており、「彼らが出来た事だから自分たちに出来ないわけがない」と主張してホロコーストに繋がったと言われています。
ユニセフが生まれたのは1946年12月11日
ジェノサイドの定義や歴史はさておき、ユニセフが生まれたのは1946年12月11日です。
先述したように第二次世界大戦の被害は凄まじく、自国の国力では国民全員が飢え死にしてしまう事態にまで発展している国々がありました。
敗戦国である日本もその1つで、満州から引き揚げた人々も帰国していたのでまさしく亡国の瀬戸際だったのです。
それが新たなる悲劇、アマゾン牢人やドミニカ移民のきっかけになりますがこれもまた横に置きます。
とにかく困窮した国、特に子供達への救済活動を目的とした団体が「国際連合国際児童緊急基金」です。
この団体名を英語に変換すると「UnitedNationsInternationalChildren’sEmergencyFund」、「UNICEF」になるわけです。
「緊急」という文字が入っているように当初は第二次世界大戦後のケアでしたが、その後は発展途上国の子供達への支援のために活動していく事になっていきます。
その支援対象になっている国と地域の数は190で、国連の下部機関として民間からの基金を呼び掛けながら、自分たちの活動を先進国である34か国と地域で行っているのが現状です。
2014年に行われたプロモーションが話題に
普及活動は積極的で、2014年に行われたプロモーションは話題になりました。
それはワシントンDCにて開催されたゲームショーで新作ゲームの発表がされましたが、そのPVを目にした観客たちの中から退出者が相次ぐ事態に発展したからです。
南スーダンの現実をゲームのPVとして描いたのですが、あまりにもショッキングな内容にゲームとして描いたとしても、またユニセフの名前が伏せられて上映されたとしても普通の世界で暮らしていたい人たちには無理でした。
伊藤計劃さんの処女作にして最高傑作である「虐殺器官」にて、登場人物たちは何度か「目に見えない悲しみ」といった言い回しをします。
「見たいものだけを見て、見たくないものは見ない」という意味合いがあるこの言葉はまさに的を射抜いていると言わざるを得ないです。
日本でもアマゾン牢人やドミニカ移民の認知度は低く、歴史の授業にも取り上げていません。
凄惨な現実に目を向けるのは難しいものの、それでも活動を続けているのがユニセフです。
ちなみに日本でも日本ユニセフはあり、ボランティアにおける募金や広報活動、アドボカシー活動などを行っています。